一般社団法人ダンストーク
Vol.13 《豊岡市》
「兵庫県豊岡市にある城崎温泉を拠点に、子どもからお年寄りまで全ての世代にダンスを届けたいです」 そう力強く話してくれたのは、2018年に設立したダンストーク代表の千代その子さん(写真左)です。ストークとは英語でコウノトリのこと。コウノトリ羽ばたく豊岡から、どのようなダンスが生まれているのでしょうか。
―ダンスで地域課題にアプローチ
「私たちの活動のベースにある『コミュニティダンス』というのは、踊りの種類ではなく『概念』なんです。性別や障害など様々な違いに関係なく、誰もが踊りを作ったり踊ったりできるという考えが柱になってます。ダンスのもつ力を活かし、社会課題に対してアプローチしていく側面もあるんです」と千代さん。肩書には、「ダンスファシリテーター」とあります。
「『ファシリテーター』とは、ワークショップなどにおける進行役のようなものです。私たちはアーティストが踊り方を教えるのではなく、踊る人自身の魅力を引き出すことを目指しています」。
そうして、ダンスを生み出していくのだそう。
ダンストークを設立したのは2018年のこと。きっかけとなったのは、約10年前に通訳スタッフとして参加した、城崎国際アートセンターのコミュニティダンス・プロジェクトでした。海外アーティストが作・演出として招かれたこのプロジェクトでは、未就学児から70代の方まで総勢70名以上の地域の方々がダンサーとして出演し、公演は満席となりました。そしてプロジェクト終了後、参加した子ども達からあがったのは「こういうダンスがやりたかった。どうしたら続けていけるの?」といった声でした。
―地域に根差したコミュニティダンスを
当時はバレエやヒップポップなどの技術を磨くダンスが主流で、自己表現をメインにするアートとしてのダンスはほぼ見られませんでした。コミュニティダンスを日本全国に広める活動にかかわりつつも、ひとつの地域に根ざして活動を深めていきたいと考えていた千代さん。
「豊岡は人と人との距離感やまちの規模がほど良く、挑戦を受けとめてもらえる土壌がありました。ここなら、地域に根ざしたコミュニティダンスの実践を築き、ダンスが社会の仕組みの中に息づくまちを、日本でもいち早く形にできるかもしれないと感じたんです」。そして立ち上げたのが、ダンストークの前身でもある「城崎オープンダンスクラス」です。
オープンクラスでは初回から約70名もの人が集まり、その後も毎月50名ほどが集まる盛況ぶり。このクラスを継続する必要があると感じた千代さんは、オープンクラスで一緒に活動した谷垣優さん(写真右)、そして城崎国際アートセンターで知り合った橋本麻希さんと共にダンストークを設立しました。

(画像:小学生によるダンスカンパニー「とことこダンサーズ」の練習風景。)

(画像:タオルを使い体を動かす子ども達。自由な動きからダンスが生まれていく。)
―おどりんさるカフェ
現在、年齢性別などを問わず誰でも参加できる移動型のオープンクラス「みんなのおどる場所」や、小学生を中心に結成したこどもダンスカンパニー「とことこダンサーズ」をはじめ、様々な教育や福祉の現場へとダンスを届けているダンストーク。その活動の一つに、パーキンソン病患者とその家族を対象にしたダンスプロジェクト「おどりんさるカフェ」があります。
パーキンソン病とはドーパミン減少に由来する進行性の神経疾患で、筋肉のこわばりや動作の遅れ、手足の痺れなどが症状のひとつ。50代以降に多く見られ、高齢化が進む但馬でも珍しくない病気です。
「豊岡での活動をはじめて10年経った今、ダンストークにしかできないことってなんだろうって振り返ったんです。色々な職業や立場の方と話し合い、見えてきたのは『社会的マイノリティ』とされる方々の存在でした。その特性やおかれている状況から、社会との関わりが少なくなってしまっている人がいます。そういう人たちとダンスで出会い、ダンスでつながる。それは私たちにしかできないことだと感じたんです」。
参加者は車椅子だったり、他人の動きを真似ることが難しい人など、病気特有の困難を抱えていました。福岡でパーキンソン病患者向けのダンス「PDダンス」を開発している一般社団法人パラカダンスとつながり、芸術文化観光専門職大学や健康福祉事務所と連携体制をつくりながらプログラムを進めていく千代さんたちでしたが、ダンスをファシリテートする上で最初は難しさもあったと打ち明けくれました。
「病気を意識しすぎてしまい、どうしたらより効果が出るかと力が入りすぎてしまったんです。もちろんリハビリ効果や踊りやすさを考えることは大切です。ですが私たちはアーティストであり、芸術の力や楽しさを誰よりも知っています。福岡のPDダンスのファシリテーターであるマニシアさんからのアドバイスもあり、ここではリハビリとしてのプログラムではなく、誰かと一緒に踊ることの喜びそのものを大切にすれば良いんだと気づきました」。

(画像:豊岡で行われた「おどりんさるカフェ」の様子。)
悩みを抜けた千代さんは、ダンスに但馬らしい雪かきの動作を入れるなどし、参加者と一緒に自分自身も楽しいと感じられるようなプログラムを考えるようになりました。千代さんは「この活動はアーティストだけでは成立しません。福祉や医療の現場に関わる、他業種の方々のサポート体制があるからこそ安心して活動することができます」と語ります。

(画像:養父市で行われた「おどりんさるカフェ」の様子。)
―人と人の関わり
10年続けてきたからこそ辿り着くことができたプロジェクトは他にもあり、豊岡市や芸術文化観光専門職大学と一緒に行っている、発達にさまざまな特性がある子どもたちが安心して楽しく過ごせる場所を増やすためのプロジェクト「きもちのミカタ」も活動中です。技術を磨くダンスも大切ですが、ダンスの楽しさはそれだけではないと千代さん。
「心も体も健康でいるには、周りの人や地域の人とのつながりがとても大切です。ダンスは自分の体で表現するので、ダイレクトに人と関わります。例えばとことこダンサーズにはこれまで、体を動かすことが得意な子もいれば人前に立つのが苦手な子もいました。しかしその中の誰かが特別にケアはされません。一緒に楽しみながら、ダンスをつくることを大切にしています」。

(画像:誰でも参加可能な移動型オープンクラス「みんなのおどる場所」の様子。この回は豊岡のとゞ兵にて、ディスコを模して行われた。)
患者と家族の関係も、ダンスを通すと「ケアする」「ケアされる」といった今までの関係から、一緒に踊りを生み出す新しい関係性が生まれることがあるといいます。
「私たちが一番大切にしているのは、この社会で新しいダンスのあり方を見つけるということです。日本中を豊かにしていくというのは一人では難しいけれど、この世界を少しでもよくしていくために、豊岡で、ダンスで、できることがあると思っています。これからもどんどん進化していきたいです」と教えてくれました。日本に広がる豊岡の変化はもう始まっています。
| Name | 一般社団法人ダンストーク |
|---|---|
| Info |
■ ダンストーク [問] (Mail) info@danstork.com [HP]https://danstork.com |