千谷(ちだに)麒麟獅子舞保存会

Vol.4 《新温泉町》

中国発祥の空想上の霊獣「麒麟(きりん)」をモチーフにした獅子舞「麒麟獅子舞」。 面長な赤い顔に一本角、太い眉の下には大きな鼻の穴と口を持ち、どこかユーモラスな表情をしています。 鳥取と但馬の一部に伝わる伝統芸能で、2019年5月に『日本海の風が生んだ絶景と秘境―幸せを呼ぶ霊獣・麒麟が舞う大地「因幡・但馬」』として日本遺産に認定されました。 その麒麟獅子舞が伝わる地域のひとつ、新温泉町千谷地区には「千谷(ちだに)麒麟獅子舞保存会」があります。

―謎に包まれた麒麟獅子



「兵庫県北部に伝わる麒麟獅子舞の多くは、伴奏に“ジャンジャン”と呼ばれるシンバルのような小型の楽器が使われます。
しかし鳥取県との境にある新温泉町千谷地区では、鳥取県と同じような鉦(しょう)を使うんです。山陰道の峠を下って伝わってきたからでしょうか、歴史の面白さを感じますね」。


そう話してくれたのは西脇明さん。千谷麒麟獅子舞保存会だけでなく、但馬麒麟児舞保存会の会長でもあります。

麒麟獅子舞の起源については定かではありません。現在残っている資料によると、鳥取藩の初代藩主が1650年に日光東照宮の御分霊を勧誘した際、麒麟獅子舞を舞ったのが始まりとされています。

また千谷地区では江戸末期に大火があり、その後、村の有志で村内の秋葉神社に麒麟獅子舞を奉納したと古文書にあります。

 

―暴れる猩々(しょうじょう)

2020年に、国選択の無形民俗文化財に指定された千谷麒麟獅子舞。4月の第3日曜日に行われる春祭りと、9月19日に行われる秋祭りの年2回披露され、家内安全や無病息災、五穀豊穣を祈願し村中を練り歩きます。



千谷麒麟獅子舞には楽器以外にも獅子が途中で寝るなど特徴がありますが、一番の特徴は獅子を先導する猩々にあると西脇さん。

猩々は麒麟獅子と同じように古代中国で生まれた想像上の動物です。赤い衣装と笑ったような面を付け、千谷地区では腰に刀を差しています。
「ゆったりと舞う獅子とは違い、千谷の猩々はとてもよく動きます。今ではそんなことありませんが、私がこどもの頃は勉強中の教室に入ってきて棒を投げたり、道を走っている自動車を止めて賽銭をねだったり。祭りが近づくと村中が賑やかになりワクワクしたものですが、千谷の人々にとって猩々はとても怖い存在だったんですよ」と笑います。



 

―これからの麒麟獅子のために

千谷麒麟獅子舞保存会は、麒麟獅子をもっと広く知ってもらおうといろいろなイベントに参加して舞を披露しています。

2023年10月には、道の駅にて開催された「日本遺産 但馬麒麟獅子舞フェスタ2023 in 山陰海岸ジオパーク浜坂の郷」にも参加。
当日は雨でしたが麒麟獅子に噛まれたい人が行列を作るほど盛り上がり、会場に設置された子どもサイズの麒麟獅子頭も人気を集めました。
西脇さんは「初めて麒麟獅子に触れた人が増え、良い機会になった」と手応えを感じ、来年の開催にも意欲を燃やしています。


 

―大切なのは「守り方」

麒麟獅子舞は各地で特色があり、それぞれの地域で大切に受け継がれてきました。

伝統を守るということは続けていくということだと西脇さん。
「生活のひとつとして、そして地域の財産として。伝統と歴史を誇りに思えるように、形を変えながら繋いでいかないといけません。
人口減の中、地域内で舞うのがやっとでイベント参加が難しい団体も少なくありませんが、少人数の団体もイベントに参加できるようになれば、より麒麟獅子舞が知られるキッカケになります」と、話します。


西脇さんは、縮小を余儀なくされる地域の状況に理解を示しつつも「“自分の村の人口が減ったから守れない”ではなく“どうやったら守れるか”」だと繰り返します。現に千谷麒麟獅子舞保存会では地区出身者を協賛会員とするなど人口減を補うための工夫を行い、明治以降一度も休むことなく奉納を続けてきました。

千谷だけでなく、但馬全体の麒麟獅子保存会として頑張っていくという強い意志を持って取り組んでいます。


「私の地域に麒麟獅子舞の伝統があって良かった」と、誇らしさを噛み締める西脇さん。
麒麟獅子に関するイベントは、これからも各地で開催を予定しています。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

Name 千谷麒麟獅子舞保存会
Info ■会長 西脇明
[住所]兵庫県美方郡新温泉町千谷192
[TEL]0796-93-0723
[Mail]kirinjishi.chidani@gmail.com

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