イサカライティング

Vol.8 《豊岡市》

イサカライティング は、2021年7月に発足した芸術団体です。2020年から兵庫県豊岡市を中心に開催されている「豊岡演劇祭」のスタッフとその仲間の声かけからスタートしました。これまで演劇の実施には、書き手・演者・会場などの手配からはじまり、初演で1回きりの公演も多いことから、その存在の認識や楽しみ方が曖昧な部分がありました。同団体では、地域住民が演劇などの芸術文化に気軽に親しむ場を増やすために、舞台や演劇といったイベントの企画運営を行っています。

―活動のきっかけ

「僕が移住した当時、個人が主宰する演劇活動が進んでいない状態でした。そんな時、知り合いから声をかけられて、豊岡演劇祭を運営しているスタッフが主導となり、スタッフ側から何かアクションを起こせないかと発足したのが『イサカライティング』です。既存のメンバーだけでなく、企画によってはお手伝いを頼む人も変えながら、活動しています」と教えてくれたのは、「青年団」の照明家であり、イサカライティング 代表理事の井坂 浩さんです。

「イサカライティング」は、照明や照らすを意味する「ライト、ライティング」と、演劇用語で書き手を表す「ライティング」、英語で正解の意味合いがある「right、all right」の3つの意味が主な由来となって創られています。

井坂さんは、2020年に所属劇団が東京から豊岡市に拠点を移すと同時に同市に移住しました。普段は但馬内外である公演の舞台照明の担当、芸術文化観光専門職大学の講師や、豊岡演劇祭の運営スタッフなどとして幅広く活動しています。

活動していると『演劇ってなに?』と言われる機会が多いという井坂さん。まずは観てもらう機会と場を作ろうと、これまでもいくつかの活動に取り組んでいます。その一つが、2023年2月に開催した「イサカライティング の今夜はトゥナイト!」と、2025年春にオープン予定のアートスペース「豊岡ミリオン座」です。

 

―日常の延長線に演劇はある

「イサカライティング の今夜はトゥナイト!」とは、豊岡市中心部・日高・出石地域で、ナイトリーディングや落語といった芸術文化を楽しむというイベントです。「冬に出歩く機会が少ない」とされる但馬地域の特性に着目した企画です。

劇場ではなく、あえて地域のお店を借りて活動することで地域の人と演劇を結ぶ手段をつくるために考案されました。またコロナ禍だったこともあり、お店側にも新たなサービスとして提案できればという思いから実施されました。

お酒と朗読劇・ピアノの生演奏を組み合わせた会や、食事と落語を楽しむ会、カフェでゆったりと寛ぎながら、井坂さんのプロデュースしたナイトリーディングを観劇する会など内容も場所もさまざまな同イベント。当日は、移動手段を持たない若者から、夜に出歩くことが少ない高齢者まで幅色い層の方が参加されたそうです。

「リーディング(朗読劇)は、どちらかというと国語の授業で教科書を音読するスタイルにも似ていて、演者も比較的立ち位置の変動が少ないため、省スペースでも実施が可能と考えました。落語は、テレビでも放映されていて馴染みがある人が多いので、前知識なく楽しめる芸術文化の一つと考えて、選びました」と語る井坂さん。演劇は仕事帰りに映画やボーリングを楽しむのと同じくらい、気軽なものであってもいいと考えます。

イベントの実施で、お店側にとっても今までなかった交流とサービスの提供が可能になり、団体としても演劇や舞台に対するハードルを下げ、気軽に楽しめるものだということを知ってもらえる良い機会になったのではないかと、振り返ります。


(画像:(左)豊岡在住の落語家・桂ぎん次郎さんを、日高地域にある「寿司割烹 高砂」に招いて実施した「高砂の夜定食と桂ぎん次郎応援寄席」の様子。(右)出石地域内のカフェ「cafe taputapu」にて実施したナイトリーディングの様子。)

しかし、地域ではまだまだ「演劇とは」「リーディングとは」どういうものかイメージしにくいお客さんも多く、今後もそのギャップを埋める活動を継続的に行っていく必要がありました。そのため、地域に演劇会場を増やせればと考えていた時に偶然見つかったのが、「豊岡ミリオン座」です。

 

―照明家が照らす、演劇の場所




「豊岡ミリオン座」は、豊岡駅から徒歩約15分のところにある「昭和パチンコ劇場ミリオン会館」の跡地にオープンした、アートスペースです。地域の娯楽の場所になればと設立したという同店舗の管理人の方より「ぜひ使って欲しい」と連絡を受け、井坂さんが譲り受けました。

現在は普段の活動と合わせて、同スペースの環境づくりに奮闘しているという井坂さん。兵庫県但馬県民局の事業補助金を活用し、新しく始動する施設で「ゆくゆくは豊岡演劇祭としての活用をはじめ、年間を通じて演劇や舞台の上演、ワークショップの開催場所として多くの人に利用してもらえたら」と話します。


2025年2月22日(土)には、プレイベントとして「豊岡ミリオン座のオープンアワー」が開催予定です。京都に拠点を置き、現代演劇の創作・上演を行う劇団「烏丸ストロークロック」と、但東地域の人々による神楽『烏丸ストロークロック×但東の人々「鶏舞」「三番叟」』や、落語家・桂ぎん次郎の公演ほか、軽食なども楽しめるそうです。同イベントの公演情報(近日公開予定)や、団体の活動ついては公式HPにて確認ください。

 

はじめから「演劇はこういうものとわかろうと、頑張らなくても大丈夫」といった雰囲気がある「イサカライティング 」。イベントにふらっと参加して「なんだかおもしろかったな」に出会う週末は、いかがでしょうか。

 

Name
Info ■ イサカライティング
   [Mail] toyooka.million@gmail.com

■ 豊岡ミリオン座
[所] 兵庫県豊岡市中央町4-12 -1階
[問] (Mail)​ toyooka.million@gmail.com
[Instagram] https://www.instagram.com/toyookamilliontheater/
[HP] https://www.toyookamillionza.com/ 

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